コラム

埼玉県立小児医療センター ビンクリスチン検出事件−「事故」か「事件」か

【何が起きたのか】

 埼玉県立小児医療センターで、白血病治療のため抗がん剤の髄腔内注射を受けた男性患者3人が重篤な神経障害を発症し、10代の1人が死亡、残る2人が意識不明の重体となっています。3人の髄液から検出されたのはビンクリスチン。静脈注射では用いられますが、髄腔内への投与は「絶対禁忌」とされる薬剤です。髄腔内に入ると上行性脊髄脳症を引き起こし、有効な治療法はありません。
 3月17日には、同時期に注射を受けた別の2人にも神経症状が生じていたことが新たに公表されました(この2人からビンクリスチンは未検出)。

【通常の「医療事故」とは異質な事案】
 医療訴訟を手がける立場から言えば、本件は通常の医療過誤とは根本的に性質が異なります。先日の千歳市民病院の薬剤取り違え事故は、看護師の確認不足という「過失」で法的に説明がつきます。しかし本件では、ビンクリスチンは3人の調剤に使用された記録がなく、セキュリティーカードでしか入れない調剤室内の鍵付き保管庫で厳重に管理されていたとされています。
 「うっかり取り違えた」では説明がつきません。病院が大宮警察署に届け出た際に「事件と事故の両面」の可能性があるとしたのは、まさにこの点です。

【法的な可能性】
 刑事面では、故意の混入であれば殺人罪ないし傷害致死罪、過失であれば業務上過失致死傷罪が問題となります。調剤記録・入退室記録・監視カメラ映像などの客観的証拠の分析が進められているはずです。
 民事面では、故意・過失いずれであっても、運営主体である埼玉県立病院機構に対する損害賠償請求は可能です。小児の死亡・重篤な後遺障害の事案であり、特に意識不明が続く2人については将来の介護費用を含め数億円規模の請求も想定されます。

 埼玉県立小児医療センターの患者さんや家族にとっては非常に心配な事態であると思います。
 速やかに原因が究明されることを期待します。

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