弁護士が取り扱う事件のうち,
一部の事件については,
特別なスキルや
能力が問われるものがあります。
経験や知識のない弁護士が対応することによって,方向性を見誤ったり,勝つべきものがおかしな方向に行ってしまうこともあります。その最たるものが,医療過誤裁判といえるでしょう。
そのほかに,不幸にも怪我を負ったり,亡くなるような事故(交通事故,労災事故,学校事故,介護事故,出産事故等)が生じた場合には,同じように医療的な観点からの争いになることがあります。
医療関係事件を扱う弁護士としては,最低限,以下の様な能力と医師のネットワークが必要になります。
01医療記録の精査,整理
02基本的文献の調査(日本のみならず英語文献も必須)
03画像が問題になる場合には放射線科専門医への相談
04担当医の面談,照会事項に対する回答依頼
05その他の専門医(協力医)への相談
06協力医への意見書作成依頼,内容についての協議
また,実際に臨床的な医療がどのように行われているのか,
そして医師がどのような発想なのかを理解していなければ,適切に事件を進めることができません。
医師から良い回答や意見をもらうというのも弁護士にとってはとても重要なスキルです。
さらに,裁判では医療事件特有の対応が求められます。戦い方も独自のものがあり,経験がなければ適切な対応ができません。特に,裁判官への効果的なプレゼンテーションを行ったり,また,相手方の医師への反対尋問で,鋭く問題を追及するためには徹底的な準備と知識・経験が不可欠です。
ところが,実際にはそのようなスキルと経験のある弁護士が,これらの事件を対応しているわけではないというのが日本の現状です。アメリカなどでは,医療事故は専門の弁護士が対応することがほとんどですが,日本ではまだそのような弁護士が多くありません。そのためか,知り合いのツテや紹介された弁護士に依頼することもあり,その場合には経験も能力も不十分な弁護士が手探りで対応していくことになり,最初の見通しを誤ってしまったり,主張すべきところを落としてしまうというリスクがあります。
医療事故や医療関連裁判という難易度が高い特殊な事件を解決に導くための必要なスキル,ネットワークを備えた弁護士が対応します。
医療事件はよく勝てない裁判であると
言われます。たしかに判決まで
至っている事件だけを見ると,
一般の事件に比べてその勝訴率は
とても低いです。
しかし,実際には医療裁判の多くは裁判前の話し合い,または裁判における和解で終了しており,その和解の結果は表に出ないことが多いという点を忘れてはいけません。中には「勝訴的和解」といって実質は勝ったと評価できる和解も多く含まれています。
どうしてもニュースになる事例や公表された事例ばかりが着目されてしまいますが,陰には公表されない事例が多数存在するのです。
では,どうして医療事故は和解で終わることが多く,しかも表に出ないのでしょうか。
まず,医療機関側が問題があると考えた事例は,裁判前に解決することが多いということがあります。明らかに過失があるような場合には損害の金額だけの話し合いにより解決してしまうということになります。また,不幸にも裁判になってしまった場合でも,医療機関側に問題があるという認識や早期の解決を希望する場合があり,その一方で患者側も医療事件の長い闘いに疲れたり,医療事件の難しさを肌で感じて,和解に納得することが多いのです。
さらに,医療機関側自らが問題があったと考えている事案の場合はもちろんのこと,そうではない場合においても和解でお金を支払ったということは何かしら問題があったことを認めることを意味します。そのため,医療機関側は口外禁止条項というのを求めることが多く,和解結果が公表されない原因となります。
したがって,全体として見た場合には,必ずしも医療事件は負ける確率が高い事件というわけではなく,適切な弁護士に依頼して,しっかりと対応すれば必ずしも難しい事件ではないと考えています。残念ながら敗訴判決となっている事例は,責任があるかどうかが難しくギリギリの戦いとなった事件か,弁護士の見通しに間違いがあり和解に至らなかった場合なども少なからずあると考えます。
医師の責任を問えるのか,勝つ見込みがどの程度あるのかなどについて正確な見通しを立てて,事件を適切な解決に導くことを重視しています。
介護事故や交通事故でも
医療に関する事件については,
必ずしも医療事件に詳しくない弁護士も
依頼を受けることがあります。
しかし,裁判の結果や損害賠償金の額は,医療に関する点で勝敗が決まることが少なくありません。これは脳挫傷や急性硬膜下血腫,頭部外傷におけるCT検査のガイドラインなどが問題となる介護事故においても当然のことながら,交通事故においても同様です。交通事故が得意であると自負しており,多数の事件を扱っている弁護士であっても,医療の問題になった途端によくわからず,深く突っ込んだ裁判をできていないこともあります。実際には,交通事故では,高次脳機能障害,CRPS,半月板損傷など,まさに医療的な観点が勝敗を決するものも多数あります。その他にも学校事故,労災事故,過労死など医療関連裁判というべき事件が存在しており,全く同じ問題があります。医療弁護士オンラインではこのような事件をまとめて医療関連裁判として捉えています。
相手が加入している損害保険会社もそのような事情を分かっていて,都合の良い主張を支える内容の医師の意見書を出して,煙に巻こうとすることもあります。実際には最初に結論ありきのせいか,意見書の内容はそこまでしっかりと練られたものではなく,容易に反論できるものの場合もあります。
協力医の意見を求め,文献を調査できる医療弁護士であれば,そのような意見書にも適切に反論し,むしろ有利に進めることができる場合もあるのです。
介護事故,交通事故,学校事故,労災事故,出産事故など,実は医療に深く関係する裁判についても,専門的な議論に負けることなく力強い対応が可能です。