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生後2カ月の乳児・1億4000万円賠償【医療事故関連ニュース】

https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1334156
2021.6.9 福井新聞オンラインより

  •  「生後2カ月の乳児が福井県立病院で受けた手術で、全身麻酔後の術後管理などに過失があり重い後遺障害を負ったとして、両親らが県に約1億4300万円の損害賠償を求めた訴訟について、和解が成立する見通しとなったことが6月8日分かった。県が1億4千万円を支払う方針。」
     とのことです。ほぼ請求額の全額を認めた内容ともいえます。もっとも遅延損害金が5年分くらい生じていると思いますので,その分はカットということになるかと思います。
  •  「乳児は16年に生まれ、2カ月後に鼠径(そけい)ヘルニアを治す手術を受けた。病室に戻って50分後、顔色が悪いことに父親が気付き看護師を呼んだが、一時心肺停止に陥り、後遺障害等級1級の呼吸器機能障害を負った。」
     病室に戻って50分ということは,術後直ちに問題が生じたわけではなさそうです。麻酔事故であればもう少し早く生じてもおかしくないように思います。原因は何だったのでしょうか。
  •  「原告側は▽手術で麻酔医が筋弛緩(しかん)剤を過量投与した▽動脈の酸素飽和度などを測るモニターを術後に装着しないまま放置した-などと主張。「適正に行われていれば心肺停止やその後の低酸素脳症は発生せず、障害を回避できた可能性は高い」としていた。」
     酸素飽和度を測っていなかったというのは管理として問題であったように思います。また,早く気がついていればすぐに対応することにより,その一時的な問題を乗り切れば後遺障害は残らなかったというのも理解できます。
  • 「病院の術後管理と後遺障害との因果関係について、中立な立場の医師2人による鑑定を実施したところ、「術後管理が十分でなかった」との意見が出された。地裁は鑑定を踏まえ1億4千万円の和解案を提示し、今年3月に双方が内諾した。」
     二人の鑑定が行われたのですね。鑑定は昔は一人が多かったのですが,一時期からは複数鑑定やカンファレンス鑑定なども行われるようになりました。おそらく鑑定医らは筋弛緩薬の過量投与の問題ではないと考えたのでしょう。

  •  術後には麻酔,出血,その他の侵襲などによる様々な問題が生じ得ます。特に乳児や高齢者,基礎疾患のある患者,心臓血管外科の大手術の場合などにおいては,術後のモニタリングは極めて重要になります。一時的に生じた問題であれば,適切な対応によって十分に救命でき,または障害の発生を防ぐことができますので,医療者側の責任は重いといえるでしょう。
  •  被害を受けた子がしっかりと賠償を受けられて良かったと思います。
    ただ,訴訟前に和解が成立していればご両親の苦痛ももう少し少なくて済んだのではないでしょうか。
    同じような事案が再び生じないことを祈ります。
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