医療関連裁判とは

医療事故

転送(転医・転院)義務違反について

齋藤 健太郎
弁護士
齋藤 健太郎

《転送義務違反》

医療事故及び介護事故においては,最初に担当した病院や施設において対応が難しい場合に,他の医療機関に転送すべきであったかどうかが争われることがあります。この場合には,担当した医師等に疾患の診断・治療の能力がないとしても,法的な責任を負う場合があることになります。

《転送義務が生じるかどうかの判断》

事案に応じて決まってくるものであるため,全ての当てはまる一般論を述べることはできませんが,以下の様な観点から事案を検討する必要があります。

  • 医師の判断能力,経験(専門性)
  • 当該施設の体制・設備
  • 転送が必要なことを基礎付ける事情がどの程度あったか(より高度な医療機関に転送することを必要とする事情)

特に最後の点が問題となることが多いといえます。

事案としては,開業しているクリニックや非専門病院の医師の場合に問題となることが多く,仮に一般内科のクリニックであっても,重傷患者を見逃さずに転送することが不可欠となります。

典型例としては,胸痛を訴えている患者(心筋梗塞,不安定狭心症,大動脈解離などを疑うべき),強い腹痛を訴えている患者(絞扼性イレウス,腹部動脈瘤破裂,虫垂炎等)などについて問題となることがあります。

《転送後の救命可能性(因果関係)について》

転送義務違反においては因果関係が問題となることがよくあります。すなわち,仮に転送したとしても,その病院に辿り着いてから検査がなされて,さらに治療に至る前に死亡したのではないかという観点からの問題です。

もちろん,病気があるので必ず助かったとはいえないこともありますが,転送していれば高い確率(高度の蓋然性などと呼びます)で助かったといえるのであれば,責任が認められるべきです。

極論すればやってみなければわからないのですが,患者の重症度や通常の救命率などから,転送されていれば助かったということをしっかりと主張していかなければなりません。

関連する判例集

tel
mail
^