医療関連裁判とは

医療事故

医療事故における診療録の重要性と証拠保全

齋藤 健太郎
弁護士
齋藤 健太郎

《証拠保全とその必要性》

医療事件においては,証拠保全手続を行うことがあります。
証拠保全手続は,労働事件など他の事件でも行うことがありますが,特に医療事件で行うことが多い手続です。

では,なぜ証拠保全が必要なのでしょうか。

裁判所では,紙の証拠などの客観的な証拠が最も重視されます。
裁判官は,いくら患者や家族が証言をしても,それだけでは簡単にはその事実があったということを認めてくれません。

「とても胸が痛いと言っていた」,「お腹の痛みはこれまで味わったことのない痛みだ」,「絶対に死なない手術だと言っていた」などと証言しても,それが診療録に記載がないとなかなか認定してもらえないのです。

だからこそ,証拠保全で診療録を確実に確保しておく必要があります。

《診療録の読み込みが事件を左右する》

逆にいえば,診療録に記載のあることはとても重要な証拠となりますし,病院側にとってはできれば隠したい証拠ともいえます。
もちろん,診療録に記載がないとしても,周辺の事情や事実の経緯を踏まえて,証言の信用性が認められることもありますが,やはりハードルは高いといえるでしょう。

私は,弁護士が協力医のアドバイスを得ながら診療録をとことん読み込むことが何より重要だと考えています。
これまでも,見落としがちな医師の記載を理由に,裁判が有利に働いたという経験も何度かあります。
逆に,医師があまりにいい加減だと,全く重要な記載がなく,戦えないと判断せざるを得なかったこともあります。

《証拠保全は時代遅れ?》

最近は電子カルテが普及するようになって,改ざんが難しくなったため,比較的証拠保全の必要性は減退しているようにも思われます。
しかし,いまだに証拠保全をやることで手に入れることができる証拠というものもあり,私は,事件によっては躊躇せずに証拠保全手続を行うようにしています。

なお,証拠保全手続を自分でやることはお勧めしません。
どのような記録があるかがよくわかっていないと出ていない記録を指摘できませんし,事件に応じて適切な証拠を探すというのはまさに訴訟を知っている弁護士にしか出来ないからです。

あとで後悔しないために,やるべきことはしっかりとやっておきましょう。

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